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2021
百人一首 (三十四) 藤原興風
藤原興風『誰をかも知る人にせむ高砂の松も昔の友ならなくに』この歌は古今和歌集巻十七、雑上に「題しらず」として出ています。「しるひと」は友人のことで、下の句の「とも」と同じ。高砂の松は兵庫県高砂市の高砂神社境内にある相生の松で、住吉の松と並んで有名。神木で、お能の「高砂」の尉と姥はこの相生の松を人間化したもの。老いて孤独の身の寂しさを嘆いている歌ですが、高砂の松には長命のめでたさも感じられます。興風...
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2021
百人一首 (三十三) 紀友則
紀友則『久方の光のどけき春の日にしづ心なく花の散るらむ』この歌は古今和歌集巻二、春下に「さくらの花のちるをよめる」として出ています。「ひさかたの」は、天に関係のある、天・空・月・日などにかかる枕詞。私はこの歌をいつ覚えたのか、この歌はとても有名だったようで、母も好きだったようで、子供の頃から何度も聞き覚えたと思います。紀友則は貫之のいとこで、宇多天皇の宮廷で活躍した歌人。紀氏は古く紀州に本拠を持つ...
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2021
百人一首 (三十二) 春道列樹
春道列樹『山川に風のかけたるしがらみは流れもあへぬ紅葉なりけり』この歌は古今和歌集巻五、秋下に「志賀の山ごえにてよめる」として出ています。京都から大津へ越える山道で、実景を詠んだと思われます。「しがらみ」は、川の岸や堤などを水が崩さないように、杭を打って柴や竹などをからいつけたもの。この歌では、しがらみは人がかけたものではなく、風がかけたもの、紅葉がたくさん散って流れてしまうことができずにいる様、...
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2021
百人一首 (三十一) 坂上是則
坂上是則『朝ぼらけ有明の月と見るまでに吉野の里にふれる白雪』この歌は古今和歌集巻六、冬に「大和国にまかれりける時に雪の降りけるを見てよめる」として出ています。夜明けのさわやかな空気が感じられ、おおらかな気持ちを感じられます。この歌が詠まれた当時は「四季の歌にはそら事したるはわろし」といわれたとか。坂上是則は平安時代前期の歌人。坂上田村麻呂の四代の孫と伝えられている。従五位下、加賀介まで進みました。...
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2021
百人一首 (三十) 壬生忠岑
壬生忠岑『有明のつれなくみえし別れより暁ばかりうきものはなし』この歌は古今和歌集巻十三、恋三に「題しらず」として出ています。「ありあけ」は、日没の後に出て、夜が明けてもなお空に残っている月。恋人が訪れてひと夜をすごし、次の日には去ってゆく。その時に、こんな歌を残してくれたなら、どんなにうれしいことでしょう。こんな歌を残してくれる人は、とっても才能あふれる、細やかな愛しい人。いくら勝手であっても忘れ...